セミリタイア、フルリタイアを目指す方のためのツールとして、資産シミュレーターを作りました。
今回は、
・資産シミュレーターの紹介と特徴
・資産シミュレーターの使い方
・ケース別の使用例と対策
・作った理由
を紹介します。
資産シミュレーターの紹介と特徴
ご自身の
・現在の資産状況
・現在と将来の収入・支出・投資
・ライフプラン(セミリタイアや子ども等)
・株式市場暴落の有無
を考慮した資産シミュレーターを作成しました。
特徴
・エクセル形式
(Microsoft Office2019以降)
・ダウンロードして使用
・パラメータを設定して
現金・投資・総資産を
シミュレーション
・暴落の有無による2つの結果
・10〜50年後のサマリー表示
・展開して詳細表示
設定できるパラメータ
(今後の要望などで随時追加)
①年利
②暴落の頻度と下落率
③自分の年齢
④現在の資産額
⑤手取り年収
⑥年間支出
⑦取り崩しのルール
⇒⑤~⑦は現役、セミリタイア、フルリタイアの3つのライフステージ、さらに自分とパートナーの2人分を設定可能。
⑧年間の積立投資額
⇒自分とパートナーの2人分、それぞれ2つの期間に分けて設定可能。
⑨ライフイベントの費用
⇒最大5つまで、車の買換えなども想定し、周期も設定可能。
⑩子どもにかかる費用
⇒最大3人まで、幼児〜大学院までの年数と年間支出を設定可能。
使い方
1.ダウンロード
以下リンクから、資産シミュレーターのエクセルを開きます。
エクセルが開いたら、
ファイル ⇒ 名前を付けて保存 を選択して保存します。
(ダウンロードしたファイルは、使用前に必ずウイルススキャンをしてください)
2.各パラメータの設定
エクセルをダウンロードして開いたら、
以下ガイドを元にパラメータを入力します。
オレンジ色セルは入力必須、
青色セルは入力任意です。
①年利と暴落
年利(単位:%)
設定した率だけ、毎年投資額が成長します。
暴落
特定の年になると、投資額が設定した率だけ下落します。上の場合だと、10年後から15年ごとに投資額が半分になります。
②自分の年齢と資産
年齢(単位:歳)
自分の現在の年齢を設定します。
現金(単位:万円)
現時点で保有している現金の総額(現金、預貯金など)を設定します。
投資(単位:万円)
現時点で保有している投資の総額(株式、投資信託など)を設定します。
上記を設定すると、これらを合わせた額が総資産として自動で計算されます。
③自分の手取り、年間支出、取崩し
年数(単位:年)
現役とセミリタイアの期間を設定します。
上の場合だと20年間現役で働き、その後15年間をセミリタイア生活、それ以降はずっとフルリタイア生活になります。
手取り(単位:万円)
現役、セミリタイア、フルリタイア各期間の手取り年収を設定します。
単発の収入(退職金など)はここでは設定せず、ライフイベントで設定します。
年間支出(単位:万円)
現役、セミリタイア、フルリタイア各期間の手取り年収を設定します。
単発の費用(家や車の購入など)はここでは設定せず、ライフイベントで設定します。
また、子どもにかかる費用もここでは設定せず、子どもの費用で設定します。
取崩しの基準額(単位:万円)
前年の現金がこの金額を下回った時、次に設定する取崩し額の分だけ投資から取崩し、現金に補充します。
現役、セミリタイア、フルリタイアの各期間の基準額を設定します。
取崩し額(単位:万円)
前年の現金が先に設定した基準額を下回ったとき、この金額額の分だけ投資から取崩し、現金に補充します。
現役、セミリタイア、フルリタイアの各期間の基準額を設定します。
④パートナーの手取り、年間支出、取崩し
入力内容は②の自分の場合と同じです。
パートナーと生計を共にしている場合は、パートナーの年間支出や取崩しの基準額、取崩し額は空欄にして、自分の入力欄にまとめても良いです。
⑤自分とパートナーの年間投資額
年数(単位:年)
投資する年数を設定します。期間1と期間2の2つまで設定できます。
投資額(単位:万円)
毎年投資する金額を設定します。投資期間は先に設定した年数になります。
上記を設定すると、期間1と期間2の投資総額が自動で下に表示されます。
⑥ライフイベントの費用
単発または数年に1回の支出や収入を、最大5つまで設定できます。
イベント名
それぞれのイベント名を自由に設定します。
金額(単位:万円)
そのイベント1回にかかる金額を設定します。収入の場合は-(マイナス)を金額の前に付けます。(上の場合では退職金のように)
開始(単位:年後)
そのイベントが最初に発生する先の年数を設定します。例えば4と入力すると、4年後にそのイベントが最初に発生します。
周期(単位:年)
そのイベントが発生する周期を設定します。
単発の場合は0を入力します。
1を入力すると毎年、3を入力すると3年に1回の頻度でそのイベントが発生します。
回数(単位:回)
そのイベントが発生する回数を設定します。
単発の場合は0または1を入力します。
⑦子どもの費用
子どもにかかる費用を幼児~大学院まで、最大3人分まで設定できます。子どもがいない場合は、空欄または0を入力します。
誕生時の年齢(単位:歳)
それぞれの子どもが誕生する時の、自分の年齢を設定します。
通う年数(単位:年)
幼児~大学院まで各期間の年数を設定します。
基本的に初期設定のままで良いです。
金額(単位:万円)
幼児~大学院まで、その子どもにかかる毎年の費用を設定します。大学や大学院に通わない場合は、その期間の金額を0に設定します。
3.結果確認
パラメータを入力すると、計算結果が都度、エクセルのシート上に反映されます。
主な結果は以下です。
毎年の現金・投資・総資産の推移
暴落無しと暴落ありの2パターンで毎年の現金・投資・総資産の推移が表示されます。(いずれも単位:万円)
上の場合だと、暴落ありの場合は35歳の時に投資額が半減していることがわかります。
総資産が0を下回っている場合「枯渇」と表示されます。
サマリー
10年後~50年後の
・年齢
・暴落無しの総資産
・暴落ありの総資産
をそれぞれ表示します。
総資産が0を下回っている場合「枯渇」と表示されます。
4.詳細の表示
エクセル上部、先に紹介した2つの結果の間にある[+]を押すと、各年の詳細な収入・支出・投資・取崩しなどの内訳が表示できます。
↓
収入・支出・取崩・投資で、数字の1は自分、2はパートナーで設定した金額です。
また、収入やお金の移動は黒字、支出は(赤字)で表示されます。
ケース別の使用例
ここからは、パラメーターの入力内容の例として、いくつかケース別の使用例を紹介します。
ご自身の状況に応じて、入力する内容の参考にしてください。
1.独身の方
シミュレーション条件:
・現在20歳
・結婚や子どもの予定は無し
・20年後にセミリタイアを計画、
60歳からはフルリタイア
・大きなライフイベントは車の購入と親の介護
独身の方は、基本的にオレンジ色の項目を入力するだけで良いです。
青色の部分は、必要なライフイベント以外は空欄または0を入力します。
この場合のサマリーは以下
わかること
・暴落無しの場合、今の計画で20年後にセミリタイアしても問題なさそう。
・リーマンショック級の暴落が定期的に起こると、フルリタイア時に資産が枯渇する。
対策
・転職などで現役時の収入を50万円上げる
・現役時の生活支出を20万円下げる
・フルリタイアを70歳からに遅らせる
といった対策でサマリーは以下になり、暴落ありでも50年後の資産枯渇を回避できます。
各年代でこれだけ資産があれば、パートナーができるなどで人生計画が代わっても、十分対応できるでしょう。
2.パートナーあり、子どもなし
シミュレーション条件:
・現在30歳、夫婦共働き
・子どもの予定は無し
・10年後にセミリタイアを計画
・家や車は買わないが、
10年に1回、大きな旅行をしたい
この場合のサマリーは以下
わかること
・現役・セミリタイアともに夫婦に稼ぎがあり、資産が右肩上がりに増える
・暴落ありでも60歳までは大きな資産が維持できる
・フルリタイア後に暴落に見舞われると危機的状況に
対策
・現役とセミリタイアの支出を50万円減らす
・セミリタイア開始を2年遅らせる
・その代わり、旅行1回の費用を200万円まで増やす
これらの条件を反映したサマリーは以下
支出減とセミリタイア開始を遅らせることで、夫婦共働きの資産増加期間を上げています。
これで資産は暴落ありの50年後でも何とか残っています。
また、60歳時点では暴落ありでも6000万円近くの資産があるので、ここで株式を全て現金化するのも一つの手でしょう。
子なし共働きは、セミリタイアを目指すにあたってかなり強いことがわかりますね。
また、気が変わって子どもが欲しくなっても、対応することができるでしょう。
3.パートナーあり、子ども2人
シミュレーション条件:
・現在40歳、妻(パート)と2人の子持ち
・投資は全くやっていない
・退職金は1500万円の予定
・子どもは大学(国公立)まで通わせる
・家と車を購入する
・60歳以降は引退し、悠々自適に暮らしたい
典型的な日本人の「理想の暮らし」ですね。
この場合のサマリーは以下
わかること
・投資をやっていないので、暴落があっても資産額は変わらない
・退職金もあり60歳時点で十分お金があるが、フルリタイア後の支出が多く80歳で資産枯渇の危機
対策
・現役引退後も負荷の低い仕事を70歳まで続ける
・妻の現役時の稼ぎを30万円増やす
・現役引退まで20年間、夫婦で年間80万円の積立投資をする
・車の購入金額を200万円に抑える
これらの条件を反映したサマリーは以下
上記の計算では、退職金を1500万円から1000万円に減らしていますが、
代わりに年金受給を70歳開始に遅らせ、受給額を120万円から150万円に増額しました。
現役時の妻の稼ぎや現役引退後10年間の夫婦の稼ぎ、そして無理のない資産運用により、60歳以降の資産を大きく伸ばせました。
終身雇用は崩壊しつつあり、それに伴って退職金が減る可能性は大きいです。
しかし、現役引退後も細く長く、健康的に働くことで、豊かな老後を送れる可能性は高められるのです。
資産シミュレーターを作った理由
作った理由は
世の中にセミリタイアを目指す人のためのシミュレーションツールが無かったからです。
世の中には様々な資産シミュレーターが公開されていますが、
・今の生活を前提にした条件になる
⇒定年まで会社員として働き続けることが前提になっている。
・ライフプランに応じた条件が設定できない
⇒いつからリタイアするか、収入に応じて投資額を変化させるか、子どもは何人持って、どの時期にいくらかかるか等(公立か私立かでも大きく金額が変わる)が細かに設定できない。
・現金と投資間のやり取りが考慮されていない
⇒リタイアしたら資産からの取り崩しも発生するが、その影響が調べられない。
・資産が伸び続ける楽観的なシナリオしかシミュレーションできない
⇒年利計算したら、グラフが右肩上がりしかしない
といったもので、とても自分の人生設計には使えないなと感じていました。
そこで、
・自分のリタイア計画を折り込み
・子どもにかかる費用や資産の取り崩し
・暴落という悲観シナリオも一緒に見られる
こんな自分(セミリタイアを目指している人)向けのシミュレーターを作ろうと思いました。
最後に
私が作った資産シミュレーターを紹介しました。
シミュレーターはあくまでシミュレーターです。
この通りの未来になることはまずありません。
しかし、シミュレーターを使って
・楽観的/悲観的な未来の両方を把握しておく
・悲観的な未来にどんな対策が取れるか考える
・対策を実践する
これらのことには大きな価値があります。
ぜひ、このシミュレーターを使って、自分の実現したい豊かな暮らしのため、今から何ができるか考え、実践するキッカケにしてください。
未来の自分のパラメータを変えられるのは、自分だけです。
ではまた。